主人公、寺崎テイは、明治42年(1909年)栃木県生まれである。この年私の祖母も生まれた。
かなりの痴呆症だった私の祖母は約20年前に心筋梗塞で亡くなった。亡くなったときには約10人の子どもに加え、その夫や妻に、20人前後の孫、何人かの曾孫に見送られて逝った。それはそれはにぎやかな葬式であった。子どもに順番を超されることもなく往生していった。
私が生まれた頃というと、給湯器というものはなく、母は冬でも水道水で台所仕事をし、常にあかぎれで悩んでいた。それよりさらに50年以上も前の北国の生活は想像すら不能である。どちらが大変というわけでもないが、どちらも大変だったのであろう。
しかし、そんな100年前であっても家をでて自立して生きていこうとする姿は、今でもかわらな生き方なのではないか。